広告イイね!:TV or ゲーム?変わり始めた広告効果とプロダクト・プレイスメント

先日宣伝会議が取り上げた“プロ野球中継 vs パワプロ 広告効果は同等”という記事は衝撃的でした。

前回まとめたD&ADアワードでも“ゲーム内広告賞”が新設されるなどし、広告媒体のパワーバランスが変わり始めていますね。今回の広告イイね!では、映像内での広告について取り上げていきたいと思います。

目次

”TV vs ゲーム”広告効果は同等という衝撃

スポーツ産業の中で分析やインサイトを提供する“ニールセンスポーツ”によると、ゲーム内のプレー動画内に表示されたブランドロゴと、プロ野球中継のバックネット広告を比較したところ「ゲーム内広告」の方が「プロ野球中継」よりも記憶に残ったという調査結果が出たそうです。

【TV中継画面】野球中継内広告/AdverTimes.より

eスポーツの画面内に表示される広告とプロ野球中継で露出する看板広告では、視聴者の記憶に残す上で同等の効果があると発表した。

Advertimes / https://www.advertimes.com/20210928/article363919/
【ゲーム画面】パワプロ内広告/AdverTimes.より

ターゲット層や、視聴時間など全く異なるだろうなと思いますが、実際にゲームの方が記憶に残る。という結果は驚きました。確かにゲーム画面内では、各ステータスウィンドウなどを始め画面の各所に目線は行きそうですよね。

また、ゲーム画面(特にパワプロ)ではゲームプレイ最適化の為に、極限までにシンプルなプレイ背景になっています。実際の中継ではバックネットのお客さんの顔や、ユニフォームロゴ等など他の部分での情報量が多いことから、よりシンプルなゲーム画面だからこそ“ロゴの印象”が強くなるのではないかな?という印象もあります。

一方、注視時間や注視回数ではプロ野球中継のほうが上となった。ニールセンスポーツは、「5秒以上の露出は目が慣れ、認識力が大幅に低下するため、試合展開が早く、広告露出が短く回数の多い『パワプロ』のほうが記憶に残りやすかったのではないか」という分析を示している。

Advertimes / https://www.advertimes.com/20210928/article363919/

実は歴史の深い“プロダクト・プレイスメント”

この様な動画内に商品(やロゴ)が出てくる形式の広告手法は、プロダクト・プレイスメントと呼ばれ、映画やドラマの世界で活用されています。最も古い事例では、1955年のジェームズ・ディーン主演『理由なき反抗で、劇中に登場した“櫛(くし)”への問い合わせが増えた為に生まれた手法だとか。

ゲーム内広告の歴史も実は古く、1988年に発売されたディスクシステム版の「帰ってきたマリオブラザーズ」の中に永谷園の広告が掲出されたものが元祖のようです。(wikipediaより)改めて画像を見てみるとすごいですね。ロゴだけではなく、しっかりと“お茶づけ海苔”のパッケージが登場しています。ドット絵の世界観でも「永谷園」と認識できるパッケージのカラーリングは秀逸ですね。

帰ってきたマリオブラザーズ/任天堂/ドット絵がかわいい。

その後もゲームの世界観に合わせて、“GRAN TURISMO”や今回取り上げられている“実況パワフルプロ野球”のように、サーキットや球場の実在スポンサーのロゴ掲出が行われています。これはPP(プロダクト・プレイスメント)というよりも、より広告に近く、またゲーム内の臨場感の演出という意味もあったのではないか?とも思います。

“接点”として“ゲーム”は無視できない存在に

2019年、日本の広告費統計の中でインターネット広告がテレビ広告を抜いた衝撃も記憶に新しいですが、ゲーム画面内というのも無視できない存在になってきました。各国でeスポーツがプロリーグとして設立されていることも含めても、いよいよ変化のときが来たな。という印象があります。

“広告”の役割とは文字通り、“世の中に広く告知”する事です。広告媒体として、TV/ラジオ/新聞/雑誌/インターネットと多くの媒体が古くから存在し、必要な人たちに必要な情報を届けるものでした。YouTubeもそうですし、こういったゲーム内広告の様な新たなタッチポイントはこれからどんどん力を付けていきそうですね。

LG電機はあつ森内での家電体験をグローバルで展開/任天堂/AdverTimes.より
LG電機はあつ森内での家電体験をグローバルで展開/任天堂/AdverTimes.より

人の1日は漏れなく24時間と決まっている中で、ターゲットの可処分時間にマッチする接点(タッチポイント)を模索する事は広告業界では必須なことなのですが、旧来の媒体からここまで速度を上げて変わってきた背景には、やはり技術の進歩があると思います。

技術で変わる“広告”

90年代のゲームは、カートリッジやDVDといった物理的な販売が主でした。つまり、古くは“データは一方通行”でした。一方、今では“常時オンライン接続”が基本となったことで、双方向でのデータ提供”が可能となりました。また、通信速度や解像度の進化もゲーム内広告の躍進の一助となっているのではないかな?と考えます。

フォートナイト内でもLG電機は、プロダクト・プレイスメントを行っている。

以前の一方通行でのソフト販売では、プロダクト・プレイスメントとして“投げる広告”しか技術的に不可能であったのに対し、インターネットの普及によって(といつまで言い続けるのか)“コミュニケートする広告”が実現可能になったことは、クライアント的にも飛躍的に出しやすい環境となったように思います。

ユーザーフレンドリーな“広告”のカタチ

如何に効率的にユーザーへのメッセージを届けるのか?という“広告”も、技術の進歩・エンターテイメントの進化によって移り変わっています。

clover on green surface
Photo by Anna Shvets on Pexels.com

予期しない広告が出る事など、Web上では“欲しい情報”以外の情報として広告というものは嫌われがちです。しかし、今回取り上げましたゲーム内広告には、世界観の演出であったり、よりリアルなロケーション描写というメリットがありユーザーフレンドリーな広告と言えるのではないかな?と感じます。

世の中に、排除される広告ではなく、より良く美しい広告で溢れていくと良いなと切に願います。ではでは。

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